“感動中国 100”の開設にあたって
雲南省の西北部、チベット自治区と四川省、ミャンマーと境界を接する地方を廸慶と呼びチベット族、ナシ族、リス族などの少数民族が暮らす地域です。
そこには標高6,740mの梅里雪山や白馬雪山、ハバ雪山、玉龍雪山など五千米を超える雪峰がいくつもあり、渓谷と草原と森林の豊かな自然があふれた地域です。チベット文化の伝統と宗教、自然と人が調和し、融合して暮らす、小説「失われた地平線」のユートピアの舞台とも言われています。
71歳を迎えた時、雲南省のシャングリラを訪れました。シャングリラへの旅は私の心に衝撃を与え、それから急き立てられるように内モンゴルや新疆、四川省へと中国の自然や文化に接する旅に出かけました。
昨年春に訪れた内モンゴルの草原では太陽と月のドラマがありました。空が群青色になり、草原の彼方の風車を赤く染めながら太陽が昇りはじめ、ふと後ろを見ると自分の影が草原の向うに一本の線でどこまでも続いていました。
初夏に訪れたカナス(喀納斯)は中国の西北、新疆ウイグル自治区にある秘境で、最後の浄土と言われています。北はロシア、東はモンゴル、西はカザフスタンと国境を接し、アルタイ山脈の山懐に抱かれてトゥバ人が自然と共生して暮らす村です。カナス湖の水はエルティシ川、ゴビ川を経て北極海に注いでいます。
昨年秋には、四川省の亜丁に行きました。氷と紅葉の渓谷を見ながら登山道を進むと、翠の輝きを放つ湖が目に飛び込んできました。標高六千mほどの央邁勇という山の近くを、五千米ほどまで登り、そこからブルーの湖を見ていると自然に涙があふれました。そこは人の心を癒す空と湖の感涙のブルーの世界でした。
亜丁への旅の途中に、こんな体験もしました。雲南省や四川省には、古から馬の背にお茶を積んでチベットに運んだ幾筋もの茶馬古道が通っています。茶馬古道で荷車を引く一人の少女に出会いました。少女は西安から荷車を引いて、今日で51日目だわと笑顔で語ってくれました。彼女はこれから何日かけてチベットまで旅をするのだろうか。その道は、チベット仏教に出会うための祈りの道でもありました。
中国には壮大で美しい自然がいたるところにあります。また悠久の歴史に育まれた文化もあり、感動の出会いもあります。そして私たち日本人が知らない自然がたくさん残っています。シャングリラやカナス、亜丁への旅をしながら、知られざる中国の自然や文化を紹介できたら。そんな想いで“感動中国 100”を開設しました。“感動中国100”は全て自身で訪ねて映した写真で構成したいと考えています。皆様のご意見や中国のすばらしい自然と文化の情報をお寄せいただけたら幸いです。
2019年4月 和中 清